ユング心理学的アプローチ「心理療法と占い」

河合隼雄先生のご子息で、京都大学こころの未来研究センター教授・センター長の河合俊雄氏
(専門分野=心理療法、ユング心理学)の著書のひとつに
「心理療法家がみた日本のこころ」(ミネルヴァ書房)があります。

 

心理療法家として40年、常にこころの最前線に立ち会って来た氏が語る
時代と共に変わるこころ、変わらないこころ、について
隼雄先生の例も多く用いて、現代を生きる日本人のこころに迫っている内容です。

 

参考に
この中の「心理療法と占い」という章から、抜粋をさせていただくと

「相談に来るクライエントから、占いに行った報告を受ける事が意外と多い。
 私としては、商売敵のようにも思える。」

「生年月日や易などで性格や運命が決まると信じるのは、
 非常に非合理的で前近代的な発想である。」
 
「しかし、歴史を見ると古代においては、占い、お告げなどがあり
 現代でも、おみくじを引いたり、流行している占いが話題になるのは
 我々に残っているこころの古層のひとつであるといえよう」

「心理療法と占いを比べてみると 興味深い共通点がみられる。
どちらも何らかの問題や課題をもった人が、解決を求めているのが通常である。

その方法は、ある程度の因果性に基づく近代の科学的な心理療法と
ある意味で非科学的に見える易や占星術などでは大きく異なるように思えるかもしれない。

しかし、ユング派の心理療法のような、夢や箱庭などを用いる技法とくらべてみると
どうであろうか。 

夢や箱庭を理解していくのと、立てた易やホロスコープを読み取るのとでは
意外と共通するところがある。

夢であれホロスコープであれ、いずれにしろ何らかのイメージから兆候を読み取り
それと こころの状態や動きとの対応を見ようとするわけなのである。」

「ユングは、易や占星術を著作の中でしばしば取り上げて、そこに本質的なものを認めていた。
それは易にしてもホロスコープにしても、宇宙についてひとつのイメージの表現であり

そこに象徴的な意味が認められること、さらにその表現とこころの状態や実際の世界で
生じてくる出来事との間に対応関係が認められる事が、大切だと考えていたからである。」

(中略)

イメージとこころや現実のつながりを見る事だけではなくて、心理療法も占いも、何かに限定する事を方法としているのも共通している。

もしも共時性という考え方が正しく、また仏教のようにすべてが縁でつながっているのならば、森羅万象から自由に兆候を読み取ればよいはずである。

しかし、心理療法が時間と場所を限り、イメージの表現としても箱庭や夢に限るのと同じように、占いも易や星の運行などに兆候を読み取る対象を限るのである。

クライエントが占い師に言われた事を聞いているとなかなか面白い。

河合俊雄氏「心理療法家がみた日本のこころ」(ミネルヴァ書房より

と書かれています。

ユングは自分の臨床体験から、こころの状態と現実との間の対応関係を認めて、
コンステレーションや共時性(シンクロニシティ)という概念でとらえようとしました。

※コンステレーション=「星座」を意味する言葉で、“点と線で連なっているもの”を表します。
(「コンステレーション」は、河合隼雄先生の京大の最終講義のテーマ。)

これは西洋占星術的な星座とは関連はなく、単に点と線で連なっているものをさしますが
こんな共通点を見出すのも、共時性と思います。

 

ユングを日本に初めて紹介し、文中の箱庭療法を根付かせた河合隼雄先生は
ご自身でも易を立てられていて、カウンセリングの助けにされていらしたようです。

※箱庭療法は、特に自分の状態や感情をしっかり説明できないお子さんに向け
効果の高いもので、日本人に合った療法として定着しています。

箱庭の中に並べられたさまざまなフィギュアについて語ってもらうことで
その中に自分自身が投影されているのを見ることができます。※

易と、ホロスコープでは、同じ占いであってもまったく違う特性を持っていますが
河合隼雄先生が共通点を感じていらしたということを知った時
これも集合的無意識のなせる業だと感嘆する思いです。

心理学と占いの関係性について、これから類する著名な書籍から得て、
学んだ事をここに記しながら、歩んでいきたいと思います。